kitsunetohitoの日記

日々の不条理を漫然と見つめる、そんな男の苦楽

人に自慢できるレベルじゃなきゃ趣味と言っちゃダメなのか? パート2

前回のあらすじ


俺「パワーコードっていうのは、例えば6弦の2フレットに人差し指を置いて、

  5弦の4フレットに薬指を置いて……この形がパワーコードです」


先輩「指痛ぇ」


俺「……」

 


とりあえずチューニングの仕方や変なバッキングの仕方を修正したり、

お手本で弾いたり和音のメカニズムを教えたりした訳で、 
というか、その頃になると俺もギターを持ち込んで自分の弾きたい曲を弾いてたのだ。
(寮に入った当初は「上手く隠せる」と思ってスクワイアのスタインバーガーモデルを

買って持ち込んでいた。すぐに実家に持って帰ってしまったが)


もっとも程なくして完全に精神的にやられて退職してしまい、

その先輩にギターを教えることはできなくなってしまった。特訓終了。
多分先輩もやられてなければ、今頃はお気に入りの曲『ティアドロップス』のサビを

コピーできていることだろう。幸運を祈る。

 

退職後、

仕事が好きで好きでたまらない人以外は趣味が充実していないとメンタルがやられる

という結論にたどり着いた俺は、


「このサイクロンとスタインバーガーが俺の命運を担っている訳だ……」

と独りごちる。

 

 


あれ、ブログを趣味にすんじゃなかったの?

 

 


ともあれ3年も触ってなきゃ状態はよろしくないかもしれない、

そんな訳で一度リペア(楽器の調整)に出すことにした。

 

場所は……と、まだ伏せておきたい。いずれもう一台のスタインバーガー

リペアに出すのでその時にでも書くかも。

 

 


そこの店長さんはとても気さくな方だった。


3年前にも新宿の別のショップでリペアに出した際、

その時の店員の横柄な態度に何とも言えない気持ちを覚えた俺だが、
今回の店長さんは話していて楽しかった。

 

「あ、サイクロンじゃないですか、スクワイア!」


「スクワイアのギター、やっぱりいいですね、状態も悪くないですよ」


「メイドイン・インドネシアかぁ、中〇製とかアメ〇カ製よりも質がいい!」


店長さんは調整しながらそんな調子で喋っていた。ギターをピロピロ弾きながら。

 


確かに状態はいい、と言いながらも、店長さんは俺のギターの妙な点を一つ挙げた。
何でも弦高が極端に低いということだった。
普通は経年や湿度によってネックがくの字に反っていって弾きづらくなるのだが、
俺のは逆で、弦とフレットの隙間が狭いという。


サイクロンには、ストラトと同じシンクロナイズドトレモロと呼ばれる機構があり、
トレモロアームを差し込んで押すとブリッジが沈み、弦が緊張し、

結果としてチョーキングした音を出すことができる。ご存知の仕組み。

そして俺がギターを買った時、そのブリッジはボディからやや浮いている状態だった。

 

しかし3年前リペアに出した際、ブリッジが完全に沈みきった状態で戻ってきたのだ。
当時の俺はトレモロを使わなかったので、「?」と思うだけで

大して気には留めていなかったが、
思えばその頃から強く押弦すると6弦とかがビビる感じがあった。

 

もしやこれが関係するのか?

 

 

 

が、その後に店長さんが言った一言。

 


「まぁ、弦高が低いと押弦しやすくて初心者には弾きやすくなるんですけどね

 

 

……チョー弾きやすかった。

 


更に店長さんは、俺が普段アンプを使用しないでギターを弾いていることも

言い当ててきたのだ。
曰く、バッキングが強すぎるからその分弦の振動が大きくなってビビるという。
おっしゃる通り、就職前も寮生活中も同居人への迷惑にならないようアンプは

使ってなかったのだ。探偵か。


おすすめのアンプなんかも紹介してもらって、根暗な俺にしては珍しく人前で

朗らかになっていた。

 

 

 

なっていたのに。

 

 

 

店長さん「ちょっと弾いてみて下さいよ」

 

 

 

 

えっ

 

マジ?


嘘でしょ?

 

 

 

そりゃそうだ、調整後はその具合を本人にも確かめてもらわなくちゃならない訳で、


ただ、人前で弾くということをやった試しがない訳で(先輩は別)、


それもピロピロか? ピロピロやんなきゃいけないのか!?

 

 

 


すっかり頭が真っ白になってしまった俺は震える指で弦を弾く……

 

 

 

 

トテトテ、ブツッ、

トテトテ、ブツッ……

 

 

 

 

……ジャンジャジャージャンジャー♪(諦めて何かのコードを弾く)

 

 

 

 

 

 

恥ずかしいっ!! 悔しいっ!!

 

 

 

 

 

思えば初めてギターを買った時もそうだ、

店員さんからの「試奏しますか?」に対して

「いえ、いいです」


3年前のリペアの時もそうだ、

「試奏、どーします?」

「いえ、いいです」

 


その当時は恥ずかしいからじゃない、実際まともに弾けなかったからだ!!

 


それに人から「お前趣味は何よ?」と聞かれて「ギター」と答え、

 

「じゃ何か弾いて」

 

「いやまだ弾ける曲とか無いから」


……そして「じゃあ趣味はギターなんて言うなよ!」と言いたげな顔!!

 


仕方ないじゃない、仕方ないじゃない!

俺には初めてギターを買いに行く時に一緒について来てくれてギターを選んでくれる

そんな先輩ギター少年なんかいなかったんだから!!

入門者の関門「Fコード」にぶち当たった時もフォームを修正してくれるような

師匠もいなかったし、
ましてや金も無いからギター教室なんて行けなかったし、

教本も教本で『あるところから急に難しくなる』のがテンプレだし!!

 

 

 

 

あ、だから俺ギター押し入れに仕舞っちゃってたのか。

 

 

 

 

 


店長さんはニコニコと微笑んでいた。いい人だ。


この店長さんが絶賛してくれたギターだ、絶対上手くなってやる。

 

 


ただ、面倒なことが一つ、ついその場のノリで

「今度はスタインバーガーの調整もお願いします」と約束してしまったのだ。

 

 


次来るべき時期は乾燥する季節か?

なんとかその日までに上手くならなきゃ。

それも人前でピロピロと弾けるようにならなきゃ……

 

 

これは趣味なのか? それとも意地なのか?

 

 

 

ティアドロップス

ティアドロップス

 

 ベースの子がタイプです